2012.8.18 Shibuya 渋谷・代々木公園

Camera: EOS 5D Mark II
Ross LONDON 13384 ACTINIC DOUBLET
Voigtlander & Sohn in Wien No 3626
ROSS. LONDON. PATENT 75M/M (3IN) XPRES F.1.9 No 132046

午前中は雨だったのですが、午後になると晴れてきたので渋谷にRoss ACTINIC DOUBLETの試写に出かけました。このレンズは明治4年頃にロンドンで製造されました。当時のレンズには焦点距離やF値は書かれていません。まだ写真乾板やフィルムという便利なものは製造されていません。自分でガラスに感光材を塗る湿版方式では感度が安定しなかったでしょうから、F値を使って露出を決めることはなかったと思います。このレンズが製造されたのと同じ1871年に、イギリス人の医師マドックスが乾板を発明します。1878から量産が始まり、安定した感度の乾板が買えるようになります。そうすると、レンズに明るさを刻印する必要が生じたのだと思います。セルロイドのフィルムの発明までは、まだ18年も待たなければなりません。

このレンズの写真と、同じ条件でキヤノンのレンズで撮影した写真を比べるという方法でF値と焦点距離を計測しました。だいたい210mm F15くらいのようです。


Ross LONDON 13384 ACTINIC DOUBLET














F=15.0, Right: Pixel crop
明治4年ごろに作られた広角レンズです。1841年(天保12年)にアンドルー・ロスが人物用に設計したが成功しなかったF4の人物用レンズを、息子のトマス・ロスが1864年(文久4年)に広角レンズとして復活させます。それがこのACTINIC DOUBLETです。F9は当時の広角レンズとしては明るい方だったようです。当時は良い広角レンズはありませんでした。1812年にウォラストン発見した風景用の単レンズ、1839年頃のシュバリエのフランス式風景用レンズ、1856年に発売されたペッツバール博士の設計したDialyte/Orthoskopレンズなどがありましたが、どれも欠点がありました。

不幸なことに、ロスのACTINIC DOUBLETのわずか2年後の1866年、画期的な広角レンズが開発されます。ロスから独立したダルマイヤーがラピッド・レクチリニアを、そしてドイツのシュタインハイル博士がアプラナットをほぼ同時に開発します。シュタインハイル博士はレンズの収差論を確立した数学者フォン・ザイデルと親しい友人であり、科学的な根拠に基づき設計されたと思われます。このレンズの評判が一気に高まり、ロスのACTINIC DOUBLETは忘れられてしまいます。

広角レンズですので、本来のフォーマット(たぶん5x7inch)でのテストが必要ですが、これはなかなか難しいので、いつものようにデジカメによる近軸上の評価とします。特にシャープではありませんが、そこそこ良く写ります。本来はもっと有名になってもよいレンズですが、運が悪かったようです。今では知る人はほとんどなく、うまく見つければ、安い値段で買うことができます。


Voigtlander & Sohn in Wien No 3626





F=3.6, Right: pixel crop
代々木公園でビールのキャンペーン?(何のキャンペーンかは不明)をしているお嬢さんにお願いしました。気前よく笑顔をふりまいて頂き、ありがとうございました。


ROSS. LONDON. PATENT 75M/M (3IN) XPRES F.1.9 No 132046





F=1.9-4.0, Right: Pixel crop
蝶の写真はF4に絞っています。他の写真は絞り開放です。ポートレートには75mmくらいが適しています。125mmとか175mmとかだと、了解をもらってから、相当の距離を後ずさりしなくてはなりません。