2011.10.9 Ikebukuro 池袋

Camera: EOS 5D
Ernemann Anastigmat "ERNOSTAR" 1:1,8 f=12,5cm 204237 D.R.P
COOKE ANASTIGMAT LENS No 204420 5 1/2INCH (140MM) SERIES O f/2
Turner-Reich ANAST. F:6.8 SER.II 212374 GUNDLACH MANUFACTURING CORP. FAIRPORT N.Y. 4X5

池袋の「東京よさこい」。天気も良く大盛況でした。比較的空いていて撮影しやすい会場はビルの陰で、直射日光はごく限られた場所にしか当たりません。涼しいし眩しくないので踊る方には日蔭の方が良いのだと思います。90年ほど前のレンズに順光で直射日光が当たる条件が望ましいので、この条件に合う場所を見つけました。しかし、すぐに曇が出てしまい、なかなか思うようにはいきません。順光で直射日光が当たる条件だとコントラストが適正レベルまで上がり、ピント合わせが格段に楽になります。日蔭だとピントをコントラストが低くて、ピントが合う率が非常に悪くなります。

エルノスターF2より3年ほど前の1920年、テーラー・ホブソンのリーがプラナー Ia F3.6を改良し、オピックF2を開発します。しかしオピックF2は売れず、後発のエルノスターF2が売れます。当時の写真家になったつもりで、この2本を比較してみたいと思います。これらに加えて、1895年にガンドラックが設計した5枚貼り合わせ(2群10枚)のターナーライヒF6.8も持って行きました。


Ernemann Anastigmat "ERNOSTAR" 1:1,8 f=12,5cm 204237 D.R.P











F=1.8, Right: Pixel crop
最後の2枚はISO=1000, 1/180秒。すでに陽は落ちて、ライトが点灯し踊りが続けられます。エルノスターの実力を見るには良い条件かもしれません。たまには夜も撮影しなかればいけませんね。


COOKE ANASTIGMAT LENS No 204420 5 1/2INCH (140MM) SERIES O f/2










F=2.0, RIght: Pixel crop

露出を明るめにすると、画面全体が白っぽくなってしまうので-0.5補正したのですが、少し暗すぎたようです。解像力は非常に高いのですが、コントラストが低いので使い難いです。プラナーやオピックなどのダブルガウスレンズは開発当初は欠点ばかりが目立って売れませんでした。その後徐々に改良され、プラナーから60年ほど、オピックから40年ほどたった時、やっと主役に昇格します。オピックで撮影しながら、主役までの長い道のりを考えてみました。

1. 同じF2クラスの大口径レンズでも、エルノスターは開放からコントラストが高くてシャープだったが、オピックは開放ではコントラストが低く画面全体が白っぽくなりやすかった。この問題はレンズ設計者の努力によって少しずつ改善されていくのですが、決定的な解決策となったのはレンズコーティングだと思います。1896年にデニス・テーラーが曇っているのに新品よりよく写るレンズを発見し、コーティングの原理を明らかにします。テーラーは1904年に人工的に曇りを作る技術を開発しますが、実用化には至りませんでした。1930年代になって、スマクラなどの研究により、コーティングが実用化されます。1950年代になると、マルチコーティング技術が開発され、さらに性能があがります。つまり、ダブルガウス型のレンズの歴史は、レンズコーティングの歴史とほぼ一致するのです。

2. エルノスターはエルマノックスという優れたフォーカルプレーンシャッターを持つカメラにセットして売り出されたため、使いやすかった。1/1000秒の高速シャッターがあり、昼間でも開放で使えた。一方のオピックはレンズ単体で売られたが、適当なシャッターがなく、せっかくの大口径レンズなのに昼間は絞って使うしかなかった。昔は大きな乾板やブローニーフィルムを使いましたから、イメージサークルの大きな長焦点レンズが必要でした。暗いレンズであれば口径が小さいので、小さなレンズシャッターを使うことができます。しかし、明るい大口径レンズには大きなフォーカルプレーンシャッターが必要になります。フィルムのサイズが小さくなれば、小さなフォーカルプレーンシャッターですみます。ダブルガウス型のレンズは、まず映画用に使われます。どうしても明るいレンズが必要だったのはもちろんですが、フォーカルプレーンシャッターだったことも有利に働いたと思います。その後、スチルカメラでも映画用フィルムを使用するようになり、それに伴ってフォーカルプレーンシャッターとともにダブルガウス型が使用されるようになりました。

3. エルノスターは望遠タイプで小型軽量だったが、オピックは標準レンズであり大きくて重かった。焦点距離が長くなるとダブルガウス型は不利です。この問題も35mmフィルムの登場によって解消されます。50mmくらいの焦点距離であれば大口径でも十分小さく軽くできたからです。

フィルムが発明され、映画が始まると、やはり写真より映画の方が面白いわけでして、皆必死で技術的な難問に取り組みます。映画は儲かる産業でしたから、性能さえ良ければ高価なレンズでも売れます。光学産業は映画に引っ張られて発展したので、映画用のレンズが面白いのは当たり前だと言えます。


Turner-Reich ANAST. F:6.8 SER.II 212374 GUNDLACH MANUFACTURING CORP. FAIRPORT N.Y. 4X5









F=6.8, Right: Pixel crop
5枚貼り合わせした効果は何となく感じられます。日陰だとよく分からないのですが、直射日光の当たった最後の写真はシャープです。3枚貼り合わせのダゴール、分離型のザッツプラズマット、4枚貼り合わせのアナスチグマットVII類との比較も見てみたいですね。同じ焦点距離のレンズを持っておられるかたは、是非比較してみて下さい。