フランス式風景用レンズ

1812年にイギリスの科学者ウォラストンがカメラオブスクラ用に、断面が三日月型のメニスカス単レンズで良い画像が得られる方法を発見します。レンズ凹面を被写体に向けて、被写体側に小さな絞りを置くことにより収差を取り除きました。

1839年にダゲレオタイプの発明とともに販売されたジルーのカメラには、シュバリエの色消しレンズが付いていました。これはウォラストンのレンズとよく似ていましたが、ガラスを二枚貼り合わせた色消しになっていました。シュバリエのレンズでは被写体側が平らでしたが、ウォラストンのアドバイスに従って、少し凹レンズに改良したレンズをフランス式風景用レンズと呼びます。ただし、今回借用したレンズは、被写体側が平らで、この面が平らか凹面かは、それほど画質に影響しないようです。

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フランス式風景用レンズ。左が被写体側で、右がカメラ側

このレンズは前に小さな穴がある関係で、F15程度で暗いという欠点がありました。26年後の1865年にブッシュのPantoskop F25, シュタインハイルのPeriskop F15などが開発されますが、これらも同じ暗いレンズでした。

翌1866年になるとF6からF8の英ダルマイヤーのラピッド・レクチリニアおよび独シュタインハイルのアプラナットが開発され、風景用レンズの主流となり、次第にフランス式風景用レンズは廃れて行きました。

中将姫光学からお借りしたLerebours et Secretanのフランス式風景用レンズ約175mm (7 inch) 約F16は、4×5でポートレート撮影した場合、絞り開放F16からシャープでした。面白いのは、普通のレンズと違い、絞れば絞るほどイメージサークルが小さくなる点です。単純に絞りでケラれるのです。約175mmのレンズでは、4×5は完全にカバーし、5×7だと四隅が少しケラれます。

下の作例は4×5で、F16, キャップで1秒の露出です。暗い曇り空のため帽子の影が目立たず、きれいに撮れました。以前から単玉はよく写るとは聞いていたのですが、確かによく写ります。合わせ鏡の状態が決して起こらずゴースト類がゼロであること、被写体側の小さな絞りによりレンズ鏡筒内部の反射が皆無であること、などが良いのだと思います。

Franch Landscape Lens 175mm F16 by lerebours et Secretan, manufactured in France in around 1845.
Exposure: F16, 1 sec by cap
Film: Fuji ACROS 100 4×5
Camera: Deardorff
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